肺癌
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症例
術後補助化学療法を施行したHIV感染症合併肺癌の2例
鈴木 繁紀堀尾 裕俊羽藤 泰原田 匡彦大熊 裕介比島 恒和
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2012 年 52 巻 3 号 p. 284-289

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抄録

背景.多剤抗ウイルス療法の導入に伴い,欧米からHIV感染症患者に肺癌などの非AIDS指標悪性腫瘍を合併した症例の報告が増加してきたが,本邦での報告は少ない.症例.症例1:50歳代,男性.当院初診1か月前にHIV感染を指摘され,右上葉肺癌,臨床病期T2aN0M0と診断された.胸腔鏡補助下右上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行し,病理病期T2aN2M0と診断した.シスプラチン/ビノレルビンによる術後補助化学療法を4サイクル施行し,術後10か月無再発経過観察中である.症例2:70歳代,男性.20年前にHIV感染を指摘され,今回左上葉肺癌,臨床病期T2bN0M0と診断された.胸腔鏡補助下左肺舌区切除+縦隔リンパ節郭清を施行し,病理病期T3N2M0と診断した.シスプラチン/ゲムシタビンによる術後補助化学療法を4サイクル施行したものの,肺内転移が出現し,現在,再発後の化学療法としてドセタキセル療法を受けている.結論.HIV感染症合併肺癌でも切除可能症例に対しては手術が推奨される.術後補助化学療法に関しては,抗ウイルス薬と抗癌剤との相互作用や,術後補助化学療法自体の適応が確立されていない点もあるが,全身状態・臓器機能に問題がなければ安全に施行することができると考える.

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© 2012 日本肺癌学会
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