2015 年 55 巻 3 号 p. 161-165
背景.Hepatoid adenocarcinoma of the lungはα-fetoprotein産生肺癌の一種であり,肝細胞癌様の組織形態を呈する稀な疾患である.症例.75歳,男性.健康診断の胸部CTで左肺下葉に腫瘤影を指摘された.呼吸器内科で精査され原発性肺癌の診断に至り,当科で手術(胸腔鏡補助下左肺下葉切除+縦隔郭清術)を施行された.病理組織学的所見は,AFP陽性で肝細胞癌に類似した組織形態を呈しており,hepatoid adenocarcinoma of the lungの診断に至った.術後経過は良好であった.術直後の血清α-fetoproteinは異常高値であったが,術後2か月以降基準値内で経過している.退院後外来で経過観察されているが,現時点では無再発生存中である.結論.本疾患は予後不良とされており,術後は血清α-fetoprotein値と各種画像検査による厳重な経過観察が必要と考える.