肺癌
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症例
薬剤性浮腫のためクリゾチニブが継続不能となり,アレクチニブへの変更投与により副作用なく部分奏効が得られたEML4-ALK融合遺伝子陽性肺腺癌の1例
難波 将史堀益 靖岡本 與平藤高 一慶服部 登河野 修興
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 55 巻 4 号 p. 212-217

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抄録

背景.クリゾチニブとアレクチニブは,ともにanaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子のキナーゼ活性阻害作用を有する分子標的薬である.副作用のためにクリゾチニブの継続が困難であった患者へのアレクチニブ投与の安全性および有効性はまだ不明である.症例.75歳,男性.ALK融合遺伝子陽性肺腺癌(cT4N0M1b Stage IV)と診断し,1次治療としてクリゾチニブを開始した.治療開始後6日目より両下肢浮腫が出現し,15日目からはうっ滞性皮膚炎も認めた.利尿薬の使用にも関わらず浮腫の増悪を認めたため,治療開始後19日目でクリゾチニブは中止した.その後,浮腫は速やかに改善したが,一旦縮小していた腫瘍の再増大を認めたため,アレクチニブを開始した.軽微な浮腫の出現を認めたものの,部分奏効と判定される抗腫瘍効果を得て,投与後6か月経過した現在もアレクチニブによる治療を継続している.結論.本症例の経験から,副作用のためにクリゾチニブによる治療の継続が困難となったALK陽性肺癌患者に対して,アレクチニブが安全かつ有効な治療薬となりうる可能性が示された.

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© 2015 日本肺癌学会
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