肺癌
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症例
ニボルマブ3回投与のみで完全奏効となった肺扁平上皮癌の1例
藤本 栄藤田 敦湊 浩一飯島 美砂
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2018 年 58 巻 4 号 p. 292-297

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抄録

背景.ニボルマブは,T細胞発現PD-1と腫瘍発現PD-L1の結合阻害によりT細胞を活性化する,PD-1抗体である.しかし,腫瘍微小環境において免疫抑制細胞のため,ニボルマブ活性T細胞は抑制される.ニボルマブ単剤による完全奏効(CR)は,腫瘍免疫学的には困難と考えられたが,そのCR例が報告されてきている.その中,ニボルマブの3回投与のみでCRとなった肺扁平上皮癌の患者を経験したので報告する.症例.80歳男性.検診異常にて当院初診.精査の結果,左上葉原発の肺扁平上皮癌cT4N3M1a IV期と診断.また,血中好酸球増多と腫瘍組織内好酸球浸潤を認めた.1次治療ドセタキセルを4サイクル投与し,2次治療S-1を3サイクル投与した.その後PDのため,3次治療ニボルマブを3回投与したが,甲状腺ホルモン異常にて中止となった.投与後に血中好酸球が急激に増加し,投与後2ヶ月で原発巣は空洞化,投与後5ヶ月には瘢痕組織のみのCRとなった.投与後21ヶ月においても,再発がなかった.結論.本症例は,ニボルマブ投与により急激な好酸球増多を伴いながらCRとなっており,好酸球がニボルマブの腫瘍免疫応答に関与した可能性がある.

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© 2018 日本肺癌学会
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