2018 年 58 巻 7 号 p. 975-979
背景.微小肺髄膜細胞様結節(MPMN)は切除肺で偶発的に確認されることが多いが,その発生母地は不明である.症例.67歳女性.咳嗽を主訴に当院受診.CTでは,左S1+2に内部に6 mmの充実性病変を伴った14 mm大のpart-solid GGNを認めた.cT1aN0M0 stage IA1の腺癌疑いで胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.術中迅速病理診断では微小浸潤型腺癌と診断され,引き続き鏡視下に左上葉切除術を施行した.術後の病理診断は,置換型腺癌であった(pT1aN0M0 stage IA1).腫瘍の近傍にMPMNを認め,免疫染色ではEMA,CD56,vimentinおよびPgRで陽性であった.また,髄膜腫で見られるneurofibromatosis-2(NF-2)遺伝子変異をFISH法で検索したところ欠失所見を認めた.術後18ヵ月経過した現在,肺癌の再発および髄膜腫の発生を認めず経過中である.結論.NF-2遺伝子の欠失所見はMPMNと髄膜腫との発生要因の類似性を示唆すると考えられており,本例の結果も一致する.希少病変であるMPMNの病態解明のためにはさらなる研究が必要である.