肺癌
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症例
致死的となった巨大な良性胸膜原発孤立性線維性腫瘍の1剖検例
土屋 武弘佐野 厚奧 茜衣福田 勉
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2019 年 59 巻 1 号 p. 82-87

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抄録

背景.胸膜原発の孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor of the pleura:SFTP)は,間葉系細胞由来の胸膜腫瘍である.切除可能であれば切除が推奨される.今回腫瘍指摘後,本人希望により未治療で経過し,腫瘍による心臓・両側肺圧排で循環不全をきたし亡くなった症例を経験した.症例.82歳女性.69歳時に呼吸困難を感じるようになり当院を受診した.胸部CTで右胸腔内に腫瘍を認めたが,精査を希望せず自己判断で通院を中止した.以後,呼吸困難となる度に受診し,軽快すると自己判断で通院を中止していた.経過中も腫瘍は増大し,右胸腔内を完全に占拠し左縦隔偏位をきたしていた.82歳時に呼吸困難で入院となり,徐々に状態が悪化し永眠された.剖検所見は臓側胸膜由来の腫瘍であり,心臓を左方へ圧排することで循環不全をきたしていた.組織学的検査では異型の目立たない紡錘形細胞を認め,CD34・STAT6陽性であり,胸膜原発の孤立性線維性腫瘍と診断された.結論.胸膜原発の孤立性線維性腫瘍の自然経過を観察した症例は非常に稀であり,組織学的に良性腫瘍であっても致死的となると考えさせられた1例であった.

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© 2019 日本肺癌学会
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