肺癌
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症例
免疫チェックポイント阻害剤使用後に非細菌性血栓性心内膜炎を発症した肺腺癌の1例
西村 正内藤 雅大大岩 綾香坂倉 康正井端 英憲大本 恭裕
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2020 年 60 巻 3 号 p. 174-180

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抄録

背景.非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombotic endocarditis:NBTE)とは,心臓弁膜に無菌性疣贅を形成する疾患概念であり,多発梗塞を引き起こし得る.症例.66歳女性.2017年2月に肺腺癌cT2aN3M0,Stage IIIBの診断となった.カルボプラチン+ペメトレキセド4コース後,ペメトレキセド9コースを投与した.2018年7月に原発巣,転移リンパ節の増大を認め,9月にアテゾリズマブを投与した.9月下旬に深部静脈血栓症を発症し,10月中旬に右上腕塞栓,上行結腸出血,腎梗塞,多発脳梗塞を認め,心エコーで僧帽弁に疣贅を示唆する所見があり,NBTEに伴う多発梗塞を鑑別に考えた.10月下旬に僧帽弁置換術を施行し,病理所見よりNBTEの診断となった.同年12月よりドセタキセルを投与し原発巣,リンパ節転移は縮小した.退院後はヘパリンカルシウム皮下注射投与で管理を行っているが,NBTEは再燃なく経過している.結論.免疫チェックポイント阻害剤使用後に凝固異常を認めた場合には血栓塞栓の有無と本疾患の合併を考えることは重要である.

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© 2020 日本肺癌学会
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