肺癌
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症例
緩徐に拡大する浸潤影を呈したT4肺腺癌の1例
小澤 雄一郎神谷 一徳石川 博一酒井 光昭
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2020 年 60 巻 7 号 p. 1001-1006

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抄録

背景.肺野に浸潤影を呈する疾患は,非常に多彩であり,その中でも浸潤影を呈する肺癌の場合,早期の診断治療が困難な症例も存在する.症例.74歳男性.前立腺癌の治療前の全身精査胸腹部CTにて,右肺下葉底区に広範なすりガラス陰影を認めた.1年後のCTですりガラス陰影の拡大とともに胸膜直下に不整な浸潤影の拡大を認めた.気管支鏡検査を施行したが確定診断はつかなかった.さらに1年後のCTではすりガラス陰影が右下葉全体に拡がり,浸潤影も右下葉底区を中心に拡大.右下葉の容積の縮小を呈してきた.他の肺葉には同様の所見を認めなかった.右下葉内を緩徐に拡大する浸潤影に対しての診断治療目的に,胸腔鏡下右下葉切除術を施行した.病理組織診断では,浸潤影の部分はすべて肺胞上皮置換型優位の腺癌(pT4N0M0,p-stage IIIA)であった.結語.緩徐に拡大する浸潤影は腫瘍性疾患の可能性もあり,慎重に診断治療する必要がある.

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© 2020 日本肺癌学会
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