肺癌
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症例
腫瘍径7 cm超の低悪性度胎児型腺癌の1切除例
上垣 内篤三村 剛史原田 洋明倉岡 和矢三登 峰代中野 喜久雄山下 芳典
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2020 年 60 巻 7 号 p. 995-1000

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抄録

背景.低悪性度胎児型腺癌は,WHOの肺癌組織分類(第4版)において腺癌の特殊型として分類される稀な腫瘍である.若年者に好発し予後は良好とされる.症例.33歳女性.胸部違和感,呼吸困難を主訴に近医を受診し,胸部単純X線写真で異常陰影を指摘され当院に紹介となった.胸部CTで右肺上葉に7.5 cm大の腫瘤を認め,上大静脈や胸壁を圧排していた.気管支鏡検査では上葉気管支基部に腫瘍の露出を認め,生検で腺癌と診断された.右上葉肺腺癌(cT4N0M0 Stage IIIA)の診断で術前化学放射線治療の施行を考慮したが,縦隔リンパ節転移を認めず周囲臓器への浸潤も確定的ではなかったため,外科的切除を先行する方針とした.気管支楔状切除を伴う右肺上葉切除と気管支形成術を施行した.周囲臓器への浸潤は認めず肉眼的に完全切除であった.病理組織学的には低悪性度胎児型腺癌(pT4N0M0 Stage IIIA)と診断された.術後補助化学療法を施行し,術後3年6ヶ月無再発生存中である.結論.若年発症の巨大肺腫瘍では本疾患も鑑別の1つとして念頭に置き,治療方針を検討する必要がある.

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© 2020 日本肺癌学会
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