32 巻 (1992) 4 号 p. 579-585
右上葉原発で, 気管に直接浸潤した扁平上皮癌症例に対し, 胸骨正中切開下に右管状肺全摘術および縦隔拡大郭清を行い得たので報告する.症例は60歳男性で, 感冒様症状を主訴に近医を受診し, 精査の結果肺癌を疑われ, 当科を紹介受診した.術前画像診断では腫瘍は右肺S1に存在し, 気管に約3cmの範囲にわたって直接浸潤していた.気管支鏡下生検で扁平上皮癌と診断し, c-T4N1M0-Stage III Bの診断のもとに手術を施行した.胸骨正中切開にてアプローチし, 両側最上縦隔リンパ節以下を系統的に郭清し, 気管7軟骨輪を切除して右管状肺全摘術を行った.再建は気管と左主気管支を端々に吻合し, 有茎大網にて吻合部を被覆した.術後一過性に両側反回神経不全麻痺と吻合部の虚血性変化を認めたがいずれも改善し, 元気に退院した.永久標本で, 気管支断端に癌の浸潤はなく, 術後病期はp-T4N2M0-Stage III Bであった.