抄録
Aspidophytine (2) は、Haplophyton cimicidiumの葉から単離された二核性アルカロイドhaplophytine (1) の酸分解により得られる6環性のアルカロイドである。2 の全合成は、Coreyらの報告が唯一の例であり、1の全合成は未だ達成されていない。我々は、独自のインドール合成法及び、ニトロベンゼンスルホニル(Ns)基を用いた中員環形成反応を用いて2の不斉全合成を達成した。活性シクロペンテノール3の Claisen–Johnson転位反応による4級炭素の構築と、二重結合の酸化的開裂と還元を鍵反応としてアセチレン5を合成した。また、バニリンから得られるイソニトリル6のラジカル環化反応によりインドールユニット7を得た。次に5と7をカップリングし、アセチレンの部分還元とアミノ基の導入を経て環前駆体9とした。11員環アミン10は、分子内光延反応により良好な収率で得ることができた。続いて、アセタールとNs基の除去、TFAでの処理により環性化合物11を得た。最後にイミン部分の還元と還元的メチル化、エステルの加水分解と酸化的ラクトン化によってaspidophytine (2) の不斉全合成を完了した。