らい菌ゲノム全塩基配列の決定は、らい菌において蛋白質をコードする遺伝子数は少なく、一方で偽遺伝子の数は多い、極めて特異な菌であることを示した。我々は、らい菌の偽遺伝子を含むゲノム領域において、RNAとして高レベルで発現する領域を同定し、菌の生物学的特性を見い出そうと試みた。その中で、 高レベルで発現し、かつ感染によって発現量が大きく変化する遺伝子領域を同定し、上位12個中6個が偽遺伝子由来であることを明らかにした。さらに、多数の非翻訳領域からも高レベルでRNAが発現していることを示した。これら偽遺伝子および非翻訳領域由来RNAの発現レベルはハンセン病の症例によって異なり、一部のRNAは治療後早期に消失していた。このことから、らい菌においては偽遺伝子や非翻訳領域が感染などに関連した機能を持ち、これらRNAの発現変動を解析することにより、病型や予後の予測、治療効果の判定が可能になると考えられた。