日本ハンセン病学会雑誌
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実験的らい性神経炎における神経上、周膜血管およびリンパ管内皮細胞のらい菌感染
David M. Scollard
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1999 年 68 巻 3 号 p. 147-155

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抄録

らい菌の末梢神経感染はハンセン病の組織病理学的診断の決め手であり、本疾患の最重要課題であるにもかかわらず、その経路と菌局在のメカニズムが分かっていない。一方、実験的らい菌感染アルマジロはらい性神経炎のモデルとして近年注目されて来た。モデルではらい菌の早期主要局在部位は神経周膜である。そこで、らい菌局在に関係する周膜細胞を確認するため神経の毎1cmの44組織片について抗酸菌を識別し、電子顕微鏡で検討した。
 結果は596組織片の36%に抗酸菌を認め、らい菌は40%の周膜血管と75%のリンパ管および25%の神経内脈管(血管とリンパ管)に見られた。神経周膜と神経内の所見を比較すると、神経周膜脈管へ神経内感染よりも早くらい菌集積が起こる事が示唆される。かかる周膜内栄養脈管への菌集積は機械的なストレスや炎症の軽度の悪化でも神経内菌血症と乏酸素血症のリスクを大いに高める。また以上の所見は早期からみられ、特異的ならい菌の末梢神経への局在に、らい菌またはらい菌を貧食したマクロファージと末梢神経脈管内皮の接着の関与があることを問題提起している。

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