日本ハンセン病学会雑誌
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四年半の不規則治療の後に、未分化群の組織を呈する皮疹をほぼ全身に再然した境界群(BT)ハンセン病の一例
石田 裕尾崎 元昭Lorella PicoriniElena Guglielmelli
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1999 年 68 巻 3 号 p. 195-199

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抄録

症例は、29才、ベンガル人男性、家族歴では父親がL型ハンセン病を発病している。1990年2月、23才時、両下腿前面と左臀部に知覚脱出を伴う低色素班を、また右尺骨神経と大耳介神経に肥厚を認め新患登録された。菌検査は陰性であった。境界群(BT)として、まずDDS100mg/dayが2週間ずつ2回、計4週間投与されただけで、その後、患者は1992年2月まで約2年間治療を中断した。1992年2月からWHO/MBを始めたところ再び6ヶ月間治療を中断した。しかし、1992年8月からはほぼ定期的にクリニックを訪れ1994年7月に治療を終了した。しかし、unsupervised doseをどの程度服用したかは非常に疑問であった。1992年9月には右尺骨神経炎を起こしたため副腎皮質ステロイド剤を服用した。1995年12月頃よりほぼ全身に新しい知覚脱出を伴う低色素班を生じたため、1996年3月クリニックを再受診した。皮疹の臨床像は境界群(BT)に似ていたが、多数であり、組織検査では、未分化群の像を示した。菌検査は陰性であった。このためRifampicin(450mg)とOfloxacin(400 mg)を28日間投与したところ全ての皮疹の消退を見た。その後、2年半皮疹その他の症状の再発を見ていない。この症例は菌検査が陰性であることより再発(relapse)ということは出来ず、再燃(recurrent)というべきであろう。その理由は不明であるが、ドーマントによる再燃が最も考えやすい。一方、宿主側のらい菌に対する免疫応答の変化をも考慮する必要がある。WHO/MDTの実施に当たっては、菌検査陰性の症例の中でMBに相当する症例にPBを投与した結果と見られる再燃が時々見られる。今回、菌陰性患者でMDT/MBの不規則な服用後の再燃を経験したので報告した。なぜ皮疹の病理組織が未分化群の像を呈したのかは不明であった。今後、同様な再燃例がPB例やMBの中途脱落者の中から起きる可能性があると考えられる。
(この症例報告の要旨は、第69回日本ハンセン病学会総会サテライトシンポジウム(1996年4月岡山市)にて発表した。)

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