日本ハンセン病学会雑誌
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経過中に皮疹の存在を認めた純神経型ハンセン病(Pure Neuritic Leprosy)の3症例
石田 裕Lorella PecoriniElena Guglielmelli
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2000 年 69 巻 2 号 p. 101-106

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抄録

皮疹を認めず、末梢神経症状のみを呈する純神経型ハンセン病(pure neuritic leprosy or PN)はバングラデシュ南部では稀ではない。1994年から1998年の当施設の新患登録統計1,741名中では141例(8.10%)がPNと診断された。この内1例は診断の誤りとして登録を抹消された。また、3例は、経過中に明らかな皮疹を認めたため他の病型に変更された。このためPNの占める割合は137例(7.87%)であった。これらの経過中に皮疹を認めた3例について、詳細を報告した。ハンセン病コントロールにおける住民に対する啓発活動の中で、PNは無視されがちであり、それゆえ発見も遅れ勝ちである。このため末梢神経麻痺による障害度も高い。ことにPNの中で、経過中に皮疹の存在を認める症例や、初診時に皮疹の存在を見落としている症例が少数存在することがあり、治療も変更せざるを得ないことがあるので、注意を要する。
症例1は、25才のベンガル人男性。広範囲なBLの皮膚浸潤を初診時に診断できなかった例であり、多発性神経症状よりWHO/MBを開始した。初診時の菌検査は4+(3箇所の平均値)であった。治療開始4ヶ月後、ENLを併発し、同時に皮膚の浸潤も確認された。
症例2は、症例1の子、7才男児。初診時、皮疹を認めず、右側の尺骨神経炎を起こしていた。WHO/MBとステロイド剤による治療開始の9ヶ月後にBTと思われる皮疹を初めて確認した。皮疹確認時の菌検査は陰性であった。
症例3は、35才のベンガル人男性。初診時、右側の尺骨神経、総腓骨神経、後脛骨神経の腫脹と圧痛を認めた。菌検査は陰性であった。PN/PBとしてWHO/PBの治療が開始された。5ヶ月後、両側の前腕に数個の知覚麻痺を伴う境界不明瞭な脱色素斑を認めたため、診断をBT/MBに変更し、WHO/MBの治療をやり直した。

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