日本ハンセン病学会雑誌
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抗酸菌の病原性に関与する遺伝子ついて
中田 登
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2000 年 69 巻 2 号 p. 61-69

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抄録

らい菌を含め抗酸菌はヒトに対して病原性を持つものが少なくないが、脂質に富む厚い細胞壁を有し酸やアルカリに強いなど、他の細菌と異なる性質を有しており、病原性の本体については不明な点が多い。本稿では、その病原性に関わっている因子について現在までに知られている知見をまとめてみる。Mycobacterium aviumなどにはプラスミドを持つものがあり、プラスミドの存在と集落の形態、薬剤耐性との関連が疑われているが、らい菌と結核菌にはプラスミドの存在は報告されておらず、病原性に関与するすべての遺伝子は染色体上に見られる。抗酸菌の病原性に関与する因子はこれまでいろいろと論じられてきたが、その多くは他の病原細菌で同定されたビルレンス因子との相同性に基づくものであった。主要な病原性抗酸菌は共通して増殖がおそく、変異株の分離とその解析に多くの時間を要する点も研究の上で障害であったと言える。しかし、近年分子生物学的手法の発達により、抗酸菌の病原性に関与する因子について直接的な証拠が示されるようになってきている。本稿では他の病原細菌における機能からの類推だけではなく、実験的にそのビルレンスへの役割が示されたものを中心に、抗酸菌の宿主細胞への侵入・増殖に関与する遺伝子について論じる。

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