日本ハンセン病学会雑誌
Online ISSN : 1884-314X
Print ISSN : 1342-3681
ISSN-L : 1342-3681
抗酸菌病原因子と宿主応答の分子機序
小林 和夫
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 73 巻 3 号 p. 263-270

詳細
抄録

病変形成抗酸菌感染症には結核、非結核性抗酸菌感染症やハンセン病などがあり、現在でも、多くの抗酸菌感染症患者が存在し、人類に甚大な健康被害を提供している。全世界では約20億人(全人口の1/3)が結核菌に既感染、毎年800万人が結核を発病、200万人が死亡している。今後10年間、少なくとも、8,000万人が発病、2,000万人が死亡することが推定されている。結核菌の病原性として、1)宿主防御機構からの逸脱や2)遅延型過敏反応(細胞性免疫応答の負の側面)の誘導があり、その結果、結核菌感染から発病に至る長期の潜伏期間、組織破壊を伴う肉芽腫炎症が特徴的である。結核菌病原因子として、細胞壁表層構成成分が関与していると考えられている。病原因子として、1)細胞壁表層糖脂質、2)lipoarabinomannan、3)補体活性化因子、4)熱ショック蛋白質や5)抗酸菌DNA結合蛋白質などがあり、これらの因子は抗酸菌や宿主に対する多機能分子である。抗酸菌感染症の制圧には抗酸菌病原因子や宿主応答の分子機序の解明、さらに、この機序の解明は新規治療戦略やワクチン開発に寄与するであろう。

著者関連情報
© 日本ハンセン病学会
前の記事
feedback
Top