日本ハンセン病学会雑誌
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比較ゲノム解析システムの開発とマイコバクテリアゲノムへの応用
榊原 康文長名 保範Kris POPENDORF
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2007 年 76 巻 3 号 p. 251-256

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抄録

近年の急速なゲノム配列の決定により、さまざまな生物種のゲノム配列データが利用可能になった。その結果、ゲノムを比較することにより、ゲノムから生命の普遍性と多様性を共に読み取ることが可能になった。また、種の違いをゲノムに生じた遺伝子種類の違いや遺伝子構造の変化によって明らかにすることが可能になった。
現在開発を行っている比較ゲノム解析システム Murasaki は、複数種のゲノム間での保存領域を高速に検出するシステムである。Murasaki が検出するのはアンカーと呼ばれる数十から数百塩基ほどの相同性の高い保存領域であり、エクソンや短い遺伝子くらいの単位である。Murasaki は徹底した高速化と高スケール化によって、(1) 3種以上の複数種のゲノム配列の比較が可能、(2) 微生物ゲノムだけでなく、高等真核生物のゲノム比較も実用時間内で可能、(3) 配列パターンの出現頻度に基づくゲノム配列の統計言語的解析が可能、などの特徴を有している。また、Murasaki の出力を可視化するツールGMVを用いて、アンカーと既存のアノテーション情報や発現解析データなどを重ねて表示することができ、さまざまな比較ゲノム解析が簡単な操作で可能となる。
本稿では、比較ゲノム解析システム Murasaki の紹介を行い、次に Murasaki を適用して M. tuberculosis CDC1551 (ヒト型結核菌)、M. leprae (らい菌)、M. avium (非定型抗酸菌) などのマイコバクテリア数種のゲノム比較を行い、オーソログ遺伝子の解析や偽遺伝子探索などを行った応用事例について紹介する。

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