日本ハンセン病学会雑誌
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日本におけるハンセン病の薬剤耐性
尾崎 元昭
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2008 年 77 巻 3 号 p. 187-196

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抄録

日本の2000年以降の多菌型で菌陽性のハンセン病患者 (LL型35例、BL10例、BT型1名) について、菌の遺伝子変異を調べて耐性発現の状況を調査した。PCR法による遺伝子変異検査の結果が得られたのはLL型で31例、BL型で7例であった。folP 変異は19/36例 (52.8%)、rpoB 変異は13/33例 (39.4%)、gyrA 変異は6/31例 (16.8%) に見られた。folPrpoB の変異例は5/36例、folPgyrA の変異例は1/36例であり、3種すべての変異を来していた例が4/36例であった。ジアフェニルスルホン (DDS) およびリファンピシン (RFP) への耐性の頻度が高く、キノロン薬への耐性もかなり高く、すでに多剤耐性菌が発生していると判明した。この検査結果に基づく治療の結果、34/38例は治癒ないし改善したが1例は改善が遅れ、治療変更を拒んだ3例では改善が見られなかった。らい菌の遺伝子変異検査はDDS、リファンピシン、キノロン薬への薬剤感受性の迅速、確実な方法として、ハンセン病治療に重要な意義を持つことがこの調査で明らかにされた。

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