高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム : 失語の回復プロセス
失語症の回復と脳機能
—PETを用いて—
横山 絵里子長田 乾
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2004 年 24 巻 3 号 p. 209-220

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抄録

脳血流量(CBF)からみた失語症の回復について,罹病期間,年齢,失語症の類型や性別などの影響に関する検討を行った。右利きの左大脳半球の脳梗塞 64例を対象に安静時 CBF を PET で測定し,最終SLTA の正答率と初回平均 CBF との相関を求めた(初回 PET,SLTA 平均85病日,最終SLTA 平均 318病日)。最終評価が 90日以内では SLTA は左半球の CBF と相関し, 90日以後は右優位に両側半球で相関を認めたが, 180日以降は相関を認めなかった。55歳以下では左優位に両側半球の CBF と相関し,55~69歳では左半球で相関し,70歳以上では相関を認めなかった。男性では SLTA は左半球の CBF と相関し,女性では両側で相関を認めた。運動失語では SLTA は左半球優位に相関し,感覚失語では右半球優位に相関を認めた。転帰良好群では SLTA は左半球優位に両側半球の CBF と相関し,転帰不良群では左半球の CBF と相関した。病初期の左半球損傷の程度が失語症の回復にもっとも影響し,右半球は慢性期の回復にかかわる可能性が示された。

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© 2004 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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