失語症の回復過程を支える脳内機序には古くから多くの議論がある。劣位側も含めた広い脳部位が統合的に言語再獲得に参加しているであろうという見識は広く認められている。われわれは近赤外線光トポグラフィーを用いて, 回復過程にある症例の言語活動を機能マッピングした。17例の脳卒中後の失語で, 回復期にある症例に対して, 光トポ計測下に語想起課題を行わせて, 脳活動を計測した。結果は, 大別して(1) 優位言語野で正常な反応, (2) 優位言語野でも異常な反応, (3) 劣位半球の活動, の3つのパターンがあることが認められた。さらに経時的追跡計測によりこの3つのパターンは時期や症例によりさまざまに変化してゆくことが観察された。とくに劣位半球が言語活動を示す場合が約30%に認められ, 時期により次第に優位側に推移していくことも認められた。リハビリテーションの方法もこれらの活動パターンに応じて変化させてゆくことが必要である可能性を検討したい。