高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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ランチョンセミナー
健忘症状群の診かた
数井 裕光武田 雅俊
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2009 年 29 巻 3 号 p. 304-311

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抄録

健忘症の評価は,せん妄や confusional state などの注意障害による見かけ上の健忘症を除外することからはじまる。その後,言語性と視覚性,再生と再認,前向性と逆向性それぞれの観点から記憶の評価を行う。MRI などの神経画像検査の結果や原因疾患に関する情報も積極的に利用すべきである。健忘症の責任部位は多彩であるが,とくに海馬,海馬傍回などの側頭葉内側部,前核,背内側核などの視床,前脳基底部が重要である。さらに脳に器質的な障害がない解離性障害でも逆向あるいは前向健忘を呈することがある。それぞれの部位および疾患ごとの健忘症状の特徴を知っておくことが必要である。また皮質下性認知症でも健忘を呈するが,アルツハイマー病よりも軽度で,手がかり再生や再認が保たれやすい。したがって,健忘の評価は両者の鑑別に有用である。

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© 2009 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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