高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
Online ISSN : 1880-6554
Print ISSN : 1348-4818
ISSN-L : 1348-4818
原著
右島皮質損傷によってネガティブ表情の識別に混乱を示した一例
寺澤 悠理梅田 聡斎藤 文恵加藤 元一郎
著者情報
キーワード: 島皮質, 感情, 表情, 内受容感覚
ジャーナル フリー

2010 年 30 巻 2 号 p. 349-358

詳細
抄録

島皮質は,我々が感情を経験するために,自身の身体内部から生じる感覚と環境情報を統合する中心的な機能を担う部位として注目されている。本研究では,右島皮質に限局的な損傷を持ち基礎的な認知能力に問題のない症例 A を対象に,表情判断および,表している感情の強さの評価課題を実施した。島皮質が感情処理における身体反応の受容・調整とどのような関係にあるかを調べるために,課題実施中の皮膚コンダクタンス反応 (SCR) を記録した。喜びや中性表情の識別は正確であったが,怒りや嫌悪といったネガティブ表情については識別能力の低下が観察された。さらに,表情が表す感情の強さを低く評価する傾向にあった。一方,顔表情に対する SCR は健常群とほぼ同一であった。本研究の結果は,右島皮質が特殊な感情の認識にとどまらず,主観的に経験する感情の強さを調整し,感情の正確な識別に重要な役割を担っていることを示唆している。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
前の記事
feedback
Top