高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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ワークショップ I : 失語症の回復メカニズム
失語症の言語治療効果に関する因子分析研究
東川 麻里波多野 和夫
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2014 年 34 巻 3 号 p. 291-297

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抄録

  「失語症の回復メカニズム」を追求する 1 つの方法として, 失語症の言語治療効果に関する因子分析研究を提示した。かつてわれわれは, 267 名の失語症患者の治療後と治療開始時の標準失語症検査得点の差を改善値と定義して因子分析を行った。結果, 一般因子は抽出されず, 固有値 1 以上の因子 6 個が抽出された。第 1 改善因子は, 「非変換的な言語産生と複雑な情報処理の因子」であり, 「失語症の中核的改善因子」と解釈された。第 2 以下の改善因子はそれとは対照的に, 言語様態に則して分化し, 言語様態変換の因子もしくは比較的単純な情報処理の因子であった。失語症の本質的改善には, 第 1 改善因子の改善が重要であり, ロゴジェンモデル上で考えるならば, 認知システムを中核とした人の言語機能において, 言語様態の入出力変換の機能改善にとどまらず, 認知システムからの自発的出力の改善と, 複雑な情報処理の入力に対応できる能力の改善が重要である, という理解が可能であった。

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© 2014 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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