高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム I : 失語症の実態と治療戦略
脳血管障害における失語症の病態と治療戦略
稲富 雄一郎
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2015 年 35 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

  言語聴覚療法の現在の問題を明らかにするため,急性期脳血管障害における失語症診療に関する調査を行った。 (1) 脳梗塞急性期失語症の実態。急性期虚血性脳血管障害の15%に入院時に失語症を認めた。 急性期転帰 (第 10 病日) は改善 46%, 不変 44%, 増悪 8%, 入院後出現 2%であった。 (2) 失語症患者の転退院経過。急性期病院からの自宅退院率は失語症合併群 9%に対し非合併群 48%であった。回復期リハ病院での在院日数は 86 に対し 64 日,3 ヵ月後の自宅退院率は 40 に対し73%であった。 (3) 言語聴覚士の臨床上の問題。アンケートの回答 159 件を解析した。問題の内容は目標設定 32%,症候 19%,病態 16%, 教育や連携 8%, 患者対応 7%などであった。また所属施設での定例検討会の開催は 44%, うち詳細な病巣同定は 13%であった。失語症診療は限られた時間と教育機会の中で行われている可能性がある。

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© 2015 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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