高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム II : 視覚背側経路は何をしているのか
頭頂葉内側部の機能
―道順障害の検討から―
高橋 伸佳
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2015 年 35 巻 2 号 p. 221-224

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抄録

  地理的障害 (道順障害) を呈した臨床例における症候学的検討に加えて, 近年のサルを用いた生理学的研究および神経機能画像研究の結果から右頭頂葉内側部の機能を推定した。右頭頂葉内側部は旧知・新規の両方の場所で, 自己中心的座標系 (egocentric representation) とともに他者中心的座標系 (allocentric representation) における空間認知に関与する。特に旧知の場所での egocentric な空間認知における役割が大きいと考えられる。移動に際して, 新規の場所では, 地図 (allocentric representation) と周囲に見えるランドマークの空間的位置を参考に自己の進むべき方角 (egocentric representation) を決める。同様に旧知の場所では, 脳内にある地図と周囲にあるランドマークの位置から目的地への方角を決める。右頭頂葉内側部は allocentric な座標系と egocentric な座標系の統合, 特に allocentric から egocentric への変換に重要な役割をもつものと思われる。

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© 2015 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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