高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム III : 前頭側頭葉変性症と紛らわしい病態
前頭側頭型認知症の多様性と臨床診断の問題
品川 俊一郎
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2016 年 36 巻 3 号 p. 361-367

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抄録

  前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia: FTD) は遺伝学的, 病理学的, そして臨床症候群としても不均一な疾患群であり, 関連遺伝子としてはMAPT, GRN, C9orf72 などが知られており, 組織病理学的にはピック球のような tau をもつもの, TDP-43 をもつもの, FUS をもつものなどに大別される。この生物学的不均一性によりアルツハイマー病における A β蛋白のような疾患特異的なバイオマーカーの開発が困難となっている。画像診断においては前頭葉の大脳皮質の損傷は均一ではなく, 臨床場面で画像のみにおいて診断を行うことは困難である。認知機能検査における遂行機能障害も疾患特異的なものは少なく, 行動徴候の把握が認知機能検査よりも鋭敏とされている。行動型 FTD では診断基準に挙げられるような脱抑制, 自発性低下, 共感性の欠如, 常同行動, 食行動変化といった行動症候が出現するが, FTD は精神疾患や他の認知症などへの過剰診断と過小診断どちらも多いため,注意が必要である。

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© 2016 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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