2016 年 36 巻 3 号 p. 376-381
前頭葉, 前部側頭葉に病変の主座を有する神経変性疾患である前頭側頭葉変性症 (frontotemporal lobar degeneration: FTLD) の臨床サブタイプのうち, 前頭側頭型認知症と意味性認知症が新たに指定難病に含まれることになったので, これらの診断基準の要点と課題を, もとになった最新の国際診断基準ならびにその妥当性を検証した研究を紹介しつつ, 論じてみたい。指定難病の前頭側頭型認知症の診断基準は, 2011 年に出版された bvFTD の国際コンセンサス基準 (FTDC) を踏襲している。一方, 意味性認知症の診断基準は, まず進行性失語を診断し, その上でサブタイプ診断するという最近の原発性進行性失語 (PPA) 診断基準ではなく, 従来通り意味性認知症を直接診断する。これまで, FTLD は行動障害が激しく若年発症例が多いことから, 既存の介護保険サービスがほとんど利用できず, 自立支援医療と障害年金のみでは経済的支援が不十分だったので, 今回指定難病に選定された意義は大きい。これを機に, FTLD に関する全国規模の調査・研究の進展が期待される。