高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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他人の手徴候の改善に運動麻痺の軽減が関与したと考えられた 1 症例
福原 みなみ橋本 幸成白土 大成高野 文音
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2021 年 41 巻 4 号 p. 413-420

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抄録

  後方病変型の他人の手徴候を呈した 1 症例に対して実施した多角的な評価に基づき, 他人の手徴候の出現に関与した要因について検討した。症例は右前頭葉, 右中心後回を含む右頭頂葉, 右側頭葉に脳梗塞を呈した 60 歳代, 右利きの女性である。左半身の表在・深部感覚障害および運動失調, 運動麻痺に加え, 意図にそぐわない左手の行動がみられ,「他の人の手のように感じる」や「左手が勝手に動く」などの訴えを認めた。本症例に対し運動麻痺, 感覚障害, 運動失調の経過を観察した。その結果, 本症例では運動麻痺の改善と「他人の手のように感じる」という訴えの消失が同時期に生じた。本症例のように他人の手徴候と同上肢に運動麻痺を合併する症例では, 随意的な運動が困難であるため, 自分の手に対する自己所有感が低下し, 他人の手のように感じやすくなる可能性がある。

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© 2021 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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