高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
身体パラフレニアに伴う特異な言語反応がリハビリテーション過程で徐々に改善し消失した 1 例
酒井 康生木佐 俊郎加藤 友未多久和 美里朝日 敏幸
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2022 年 42 巻 1 号 p. 20-28

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抄録

  麻痺側上肢の自己所有感を喪失した脳梗塞の 1 症例の 5 ヵ月間のリハビリテーション経過を報告した。症例はプッシャー症候と左半側無視が先行し, 身体パラフレニアに伴う言動は発症 2 ヵ月過ぎてから出現した。療法士は患者の患肢の誤帰属感に支持・共感的に接しつつ, 患側上肢を含む動作を全身が映せる姿勢鏡で見せながら身体図式と身体イメージの強化を行った。その際に身体の自己所有感を高めるため大きな鏡を用い, 鏡を通じて療法士とともに腕を見ることで三人称の視点を作り, その後, 直接自分で腕を見ることで一人称の視点に汎化するために, 両視点を結ぶ感覚運動統合能力の改善を図った。その結果, 改善が難しい症例もあるとされる身体パラフレニア症候の消失に至った。以上のような改善が起こった背景について, 関連する諸文献を参考に, 考察を行った。

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© 2022 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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