2025 年 45 巻 1 号 p. 1-10
左視床出血に伴い類音的錯読を認めた失語症例を経験した。類音的錯読は,語義失語の特徴として知られており,類音的な誤りに関して本例と語義失語の報告例を比較検討した。症例は75歳,右利き男性。頭部MRIで左視床前方・内側を中心に広がる出血を認め,音読,書字で類音的な誤りがみられた。音読,書字,呼称障害の誤反応を精査した。類音的な誤りは軽度の語の意味理解障害の影響が示唆された。呼称では誤反応に浮動性があり,語頭音ヒントに対する反応が軽度の語義失語に類似していた。