人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
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原著論文
児童期からの首輪装着は成熟後の形態と体構にどのような影響を及ぼすのか
―カヤン人女性の高径データの分析から―
下田 敦子Than Naing大澤 清二
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2015 年 2015 巻 25 号 p. 272-286

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抄録

カヤン社会(カヤン人ラフィグループ)の女性は,児童期から長大な真鍮製の首輪(成人女性用の首輪の重さは約3kg)を装着する,という習慣(身体変工)を今なお保持している.こうした身体変工は身体形質(形態),体構(プロポーション)に,どのような影響を及ぼすのであろうか―これを解明するために筆者らは,カヤン人ラフィグループの人々が多く居住するとされるミャンマー連邦共和国カヤー州ディモソー地区のS村,R村,P村を調査地として,人類学的計測を主とした現地調査を2012年より継続して行っている.そこで本論文では,児童期から首輪を装着しているカヤン女性(76人)と,装着していない(装着した経験がない)カヤン女性(52人)を対象として行った人類学的計測のデータから,首輪の装着が身体に及ぼす影響について検討した.その結果,形態の主要な11個の高径項目,および同項目により定義したプロポーションを表現する10個のプロポーション項目を取り上げて,装着群と非装着群との2群間の較差をt値により評価したところ,11個の高径項目のうち,装着群が有意に大きいt値を示したのは,頸長(t0=9.507)と頭頸長(t0=8.161)であった.10個のプロポーション項目による比較でも,装着群が有意に大きなt値を示したのは頸長(t0=9.508),頭頸長(t0=9.003)であった.この結果を基にさらに考察したところ,首輪を装着している女性は,首輪を装着していない女性に比べて,形態,プロポーションに大きな変容をきたすことが明らかであり,特に,頸部を中心として胸骨上縁より上部における影響は著しく,肩の位置,上肢(中指端高)へも影響が大きいことが明らかになった.

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© 2015 大妻女子大学人間生活文化研究所
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