人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
ISSN-L : 2187-1930
短報
福祉施設での従事者のサークル活動による離職予防と人材育成の効果
石井 千麻
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 2020 巻 30 号 p. 1008-1018

詳細
抄録

 社会福祉事業に従事する者の確保を図るため,従事者の余暇活動や日常生活に対する支援が注目されている.しかし,介護労働安定センターの調査における,福利厚生についての施設長の回答の優先順位は下位となっており,余暇活動の費用はバブル崩壊以降減少している.一方,日本経済団体連合会の調査によると,福利厚生のニーズは高まっているが,実際の福利厚生についての考え方は施設長と一般職員の間でも開きが見られる.そこで本研究では,福利厚生として,従事者によるサークル活動を推奨する福祉施設の管理職職員6名を対象に,サークル活動の推奨の目的や,人材育成,離職予防の効果を明らかにするために,半構造化面接によるインタビューを実施しM-GTAによる分析を行った.その結果,A福祉施設では,人材育成において,管理職職員は職員の些細な変化を見逃さず,職員が自発的に行動できるように側面的に支援し見守っていたり,時間をかけてサークル活動を通じ後進を育てたりしていた.しかし,A福祉施設の管理職職員は,サークル活動による離職予防を意識してはいなかった.A福祉施設のサークル活動では職員が対等な立場で参加でき,しかも個々の職員が好む活動内容であるために,職員間のコミュニケーションも増加していた.これらの要因が職員間の凝集性を高め,継続勤務につながり,結果的に離職率が低下したのではないかと考えられる.今後の課題として,他施設の福利厚生のニーズや離職予防の対策を明らかにすることが残された.

著者関連情報
© 2020 大妻女子大学人間生活文化研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top