2021 年 10 巻 2 号 p. 72-80
ALLの治療成績は大きく改善したが,難治例の治療,抗がん剤の毒性軽減のために新薬導入が必要である。Ph陽性ALL患者に対してはイマチニブと化学療法の併用によってHSCTを回避出来る可能性が示唆されている。またPh-like ALLでもABLやPDGFRBなどのチロシンキナーゼ遺伝子転座を有する例でTKIの有用性が示された。B細胞型ALLの再発・難治例に対しては免疫療法として,ブリナツモマブ抗体投与とCAR-T細胞療法が保険収載された。6メルカプトプリンの代謝はNUDT15の遺伝子多型に依存することがわかり,その検査が保険収載された。一方ALL治療後に二次がんを来たしやすい遺伝性素因(TP53など)もわかってきた。今後,ゲノム医療の進歩により,ALLの発症機転,芽球の薬剤感受性,薬物による毒性,二次がんを来たしやすい素因などが統括的に明らかにされ,個別化医療の一層の進展が期待される。