2019 年 8 巻 1 号 p. 9-15
成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATLL)は,human T-lymphotropic virus type-1(HTLV-1)が原因の末梢性T細胞腫瘍で,その予後は極めて不良である。同種造血幹細胞移植(同種移植)は,graft-versus-ATLL(GvATLL)効果を介し,ATLLの長期予後を改善する。しかし,他の疾患と比較して,ATLLに対する同種移植の成績は依然不良である。近年,免疫学的な作用機序も併せ持つmogamulizumabやlenalidomideなどの新規薬剤が臨床導入された。GvATLL効果を増強するため,同種移植前後に,これらの薬剤をどのように使用するかについて検討が進んでいる。さらに,網羅的なゲノム変異解析やトランスクリプトーム解析により,programmed death-ligand 1(PD-L1)遺伝子の3′非翻訳領域の欠損がPD-L1の過剰発現をもたらし,ATLL細胞の腫瘍免疫からの回避を可能にするという新しい免疫逃避のメカニズムも報告された。新規薬剤の導入や免疫治療の背景となる基礎研究が進むことで,ATLLに対する新規治療開発も加速,TaxやNY-ESO-1などを標的とする新規免疫細胞療法の臨床試験が進行中である。