日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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症例報告
気管支肺胞洗浄が早期診断に有効であった同種造血幹細胞移植後の肺ノカルジア症
安藤 理恵小川 英輝大隅 朋生谷口 真紀吉田 馨大楠 清文庄司 健介宮入 烈富澤 大輔松本 公一加藤 元博
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2019 年 8 巻 3 号 p. 102-106

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抄録

 慢性肉芽種症に対してHLA一致非血縁者間骨髄移植を施行した17歳男性。移植後5か月より急性GVHDを認めてプレドニゾロン (PSL) を使用していたが, 移植後9か月に閉塞性細気管支炎と診断した。PSL増量にて呼吸器症状は軽快傾向だったが, 移植後12か月の肺CTで右S2に約3cm大の結節影を認めた。血清学的な真菌マーカーは陰性であり, 原因検索のために気管支鏡検査を施行した。検査で得た気管支肺胞洗浄液からNocardia abscessusが検出され, 肺ノカルジア症と診断した。ST合剤の増量によって肺野の結節影は改善した。ノカルジアは通常の細菌と比較して発育が遅く培養検査での検出率が低く, 画像診断学的にも抗酸菌や真菌感染症との鑑別が困難である。造血幹細胞移植後の呼吸器感染症は様々な鑑別疾患があるが, 小児においては侵襲性のある検査が回避され原因微生物の特定が遅れることが少なくない。診断・治療の早期介入ならびに不要な抗真菌剤投与の回避に気管支肺胞洗浄が有用である。

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© 2019 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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