日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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総説
造血細胞移植を受療する患者の妊孕性温存と滋賀県の取り組み
木村 文則
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2020 年 9 巻 1 号 p. 6-12

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抄録

 小児を含む若年がんに対する治療の発達によりがんを克服したがん経験者(cancer survivor)が増加している。その一方でその治療によりヒトとして本来兼ね備わっている機能の低下,殊に妊孕性の低下が大きな問題となってきている。日本癌治療学会が2017年に作成した小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドラインにおいて,がん治療が最優先であるとともに,挙児希望がある場合には可能な限り生殖医療を専門とする医師を紹介することが勧められている。造血細胞移植の骨髄破壊的前処置は,高率に卵巣機能不全を惹起する。施行者は,その妊孕性への影響や妊孕性温存方法について理解するとともに,地域ネットワークのシステムを理解し,うまく活用することにより造血細胞移植後の患者の生活の質の向上に努めるべきである。

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© 2020 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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