日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
症例報告
自家末梢血幹細胞移植後に肺動脈性肺高血圧と移植関連血栓性微小血管症を発症した神経芽腫患児
池田 正樹西川 拓朗棈松 貴成川村 順平横山 智美平井 克樹宮原 恵弥子茂見 茜里猪川 和朗岡本 康裕右田 昌宏河野 嘉文
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2020 年 9 巻 2 号 p. 60-64

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抄録

 症例は左上縦隔原発,骨転移の神経芽腫の2歳女児。化学療法後にbusulfan,melphalanを用いた大量化学療法を行い,自家末梢血幹細胞移植を施行した。day 61に易疲労感,低酸素血症を主訴として肺高血圧症を発症した。Day 91には貧血,破砕赤血球の出現,血小板減少,血清クレアチニン上昇があり,移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)と診断した。肺高血圧症も悪化がみられ,心臓カテーテル検査で肺動脈性肺高血圧(PAH)と診断した。水分管理でTA-TMAは改善し,PAHは酸素療法で治療開始した。day 131に肺高血圧クライシスから心停止を来した。集学的治療により救命し得たが,神経学的後遺症を残した。PAHは,sildenafil,bosentanを開始し,改善した。PAH,TA-TMAはいずれも血管内皮障害に起因する造血幹細胞移植後の重篤な合併症であり,移植後にPAHを発症した症例においてはTMAの所見が出ないか注意してフォローアップする必要がある。

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© 2020 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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