近代教育フォーラム
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思想史研究と教育の<現実>(コメント論文,検証:思想運動としての教育思想史学会-私たちには何ができたのか/できなかったのか-,シンポジウム)
西村 拓生
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2009 年 18 巻 p. 155-163

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抄録

シンポジウムの焦点の一つは、思想史研究と教育の<現実>との"つながり"の問題であった、と見る。かつての近代教育思想史研究会の「成功」の一因は、近代批判によって当時の教育問題が解決できる"かのような"期待をいだかせたが故であった。しかし、それは必ずしも思想史研究一般の可能性ではなく、時代の追い風を得た僥倖だったのではないか。今日、近代批判の契機がアクチュアリティを失いつつあるように思われる一方で、教育の<現実>を作り出しているのは畢意<言葉>である、という見切りが、この学会で育ってきた世代の研究者には共有されているように思われる。それが、ポストモダニズムの時代の思潮を最もよく"こなし"得たこの研究会一学会の、もう一つの達成だったのではないか。今後も思想史研究を通じて教育という営みの「語り直し」の拠り所であり続けることが、教育思想史学会の存在意義の一つであると考える。

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