人文地理学会大会 研究発表要旨
2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 304
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過疎地域における高齢者の日常生活行動
奈良県吉野郡川上村を事例として
*朴 澤龍
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抄録

近年,過疎地域における高齢者のみの世帯の増加は,諸サービス機能のさらなる縮小とともに,日常生活行動においても移動制約者の増加,行動の地域格差などをもたらしている。このような過疎地域では,日常生活圏整備が必要とされ,それに先だって高齢者の日常生活行動の実態をより明確に把握することが重要となる。その際,従来の一町村や中心集落のような分析単位ではなく,類似性を持った集落類型に基づいた研究が必要となり,有用な空間的単位の一つとして,「流域圏」が考えられる。さらに,高齢者が抱える制約要因は,居住環境などにおいて共通するのもあれば,世帯の個人属性によって相違するのもあり,それらを一元的に議論することはできない。すなわち,世帯をさらに類型化することによって,個人属性の格差による制約要因などもより明確になり,高齢者の生活行動実態をより正確に把握することが可能になると考える。 そこで,本研究では,高齢化が進みつつある奈良県川上村を対象に,高齢者を中心とする移動制約者の日常生活行動(購買・通院・余暇)の実態と問題点を,アンケートと聴き取り調査を通じて明らかにする。 結果,高齢者の日常生活行動は既に町村域を超えており,通院にあわせた購買行動や別居家族または親族訪問に際した購買・通院行動のような多目的の場合が多く,より遠方の移動ほどその傾向が強くなるが,移動頻度は頭打ちとなる。特に単身世帯ほど多目的移動者が多く,別居家族との空間的距離関係が強く影響する。また,高齢者の居住環境・世帯構成・交通条件の違い,諸施設との位置状況などから,集落や世帯間には格差があるのみでなく,類似性も持つことがいっそう明確にした。 今後,高齢者を中心とした移動制約者の生活行動問題は,過疎農山村のみならず,都市の郊外地域においても発生しており,これらの比較研究も重要となろう。

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© 2004 人文地理学会
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