抄録
報告者はこれまで1973年,1983年,1993年の各年次において,産地から消費地に至るわが国の野菜の流動の地理的パターンを検討してきた(荒木 1998)。その結果,1970年代までは関東や,近畿,中国といった各地方ごとに完結性の高かった青果物の流動体系が,80年代90年代を通じて変化し,各地方の枠を超えた全国的な体系が構築されたことが明らかになった。特にその頂点となるのが東京や大阪などの大都市であり,産地サイドでは地方市場への出荷を担っていた中小産地の淘汰が進み,全国的な大市場への出荷を担う大型産地の成長と極化(polarization)が進行した。本報告は以上のような研究蓄積を踏まえて,次なる10年間でのわが国の野菜流動における変化を明らかにすることを目指すものである。検討の結果,1980年代90年代を通じて認められた,大産地と大消費地を結ぶ野菜の流動体系が一層進んでいるということができる。特に北海道や東北地方の野菜産地としての成長が目立ち,ネギや,キュウリ,ピーマン,トマトなどでも相当量を全国各地に出荷するに至っている。また,今後は海外産生鮮野菜の動向にも着目する必要がある。