人文地理学会大会 研究発表要旨
2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 502
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パキスタンの住宅政策にみるスラム開発の方針について
連邦および州政府の視点から
*森川 真樹
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抄録

パキスタンの住宅セクターは、1970年代以降、政府からほとんど注視されず、スラム開発も十分な対策はなされずにきていた。1999年10月に政権を奪取したムシャラフ軍事政権は、国家の復興および欧米からの支持を得るため、数多くの改革を実施した。2001年に連邦政府により制定された住宅政策は全12項目で構成され、第5項の「スラム開発」において、急速な都市化や難民流入といった都市部のスラム拡大の諸要因を分析し、土地マフィアやマネジメント不足の問題、開発コントロールの強化、低所得者層のニーズにあわせた漸進的開発、等が記載されている。 各州において開発プログラムを作成する地方自治体や大都市の開発当局は、十分な能力を持つ機関が少なく、UNDPがパンジャーブ州政府と協力し、都市貧困層を対象としたPLUSプログラムを1997年に開始した。その特徴は、カラチのスラム開発で成果を上げたオーランギー・パイロット・プロジェクトの住民参加型・自助努力型開発方法を利用する、Social mobilizerがコミュニティに入って住民の気づき・意識改革を促す、低価格下水道設備を導入しステークホルダーへのトレーニングを実施して持続性を確保する、コミュニティを基準とした内的・外的開発の概念を定着させる、等である。筆者が行ったインタビュー調査等にて判明したPLUSの成果と課題を政府の立場に絞ってまとめると、成果では低所得層住民も開発に対して応分の経費負担の用意があることが分かった、自助努力の意義を住民が理解した、開発に対する住民の意識・能力が向上した、等である。課題では「プロセス重視」と「目標達成重視」での開発観の相違がある、サンプル数が十分でない、住民の意識や能力が向上しても次のプロジェクトに活用できない、等があげられる。これらの成果と課題をもとに、全国的な展開を如何に図るかを検討する必要が今後残されている。

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