人文地理学会大会 研究発表要旨
2004年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 515
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NGO間ネットワークの地理的編成
*埴淵 知哉
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抄録

NGO(非政府組織)は,非営利・非政府性を組織の編成原理とする主体である。NGOの特徴として国境を越えたグローバルな活動があるが,組織の基盤となる地域や国内におけるネットワークも明らかにする必要がある。そこで,本発表では日本におけるNGO間ネットワークの地理的編成について報告する。 日本のNGO団体は全体として東京一極集中であり,職員や会員,財政規模からみるとその傾向は一層著しいものとなる。逆に地方では,比較的小規模で新しい団体が多い。しかし近年,所在地の地域を単位とした地域型ネットワークNGOが日本各地で設立されている。このような動きが生じる要因は,広い意味で「地域」への着目に求めることができる。地域密着を実践し,「顔の見える関係」のなかで組織間関係を編成することが,地域を単位としたネットワークNGOの存在理由であると考えられる。 また90年代以降,ネットワークNGO間の全国的なネットワークを組織しようとする試みがおこなわれてきたが,それに対しては賛否両論があり,長い間構想はあるものの設立には至っていない。その主な争点は,政府や市民に対するNGOの影響力拡大を優先するか,各ネットワークNGOおよび地域の自律性や多様性を重視するかという点である。 単一組織として全国展開が進んでいない日本のNGOにとって,このNGO間ネットワークの地理的編成が影響力や正当性を獲得するための空間編成戦略であると考えることができる。ネットワーク本来の意義を考えた場合,地域の自律性と全体の影響力拡大は必ずしもトレード・オフ関係にあるわけではない。INGOの空間組織にみられるような両者が相乗的に結びつくような仕組みを,日本という枠組みにおいて構築できるかどうかが,今後のNGO間ネットワークの方向性を規定するといえる。

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