人文地理学会大会 研究発表要旨
2007年 人文地理学会大会
セッションID: 511
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第5会場
モンゴルにおける商社の卸売業展開と市場の変化
*高原 浩子
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抄録

 本報告はモンゴルの物資流通において近年、重要な位置を占めるようになった商社に注目し、その活動の中でも特に卸売業部門の動きを取り上げてその展開と市場(しじょう)への影響について示そうとするものである。  かつてモンゴルの物資流通においては、中間に他者を介さず商業者が商品の仕入れから販売までを一手に引き受ける商業のありかたが主流であった。日用消費物資を輸入に頼る傾向の強いモンゴルでは、商品の調達はすなわち外国への仕入れを意味することが多く、あらゆる商業者がロシアや中国に出向いていた。やがて効率化の意識が浸透すると、物資流通の分業化、専門化が進み、商社によって大規模な輸入、卸売が始まって、効率的、経済的な商品調達が実現された。もちろんこれまでも卸売商業者は存在し、現在も存続しているが、その役割も商社の展開によって変容してきているといえるだろう。これまで卸売業を中心的に担ってきた市場(いちば)は小売へと中心的役割を移行する、あるいは、商社を利用しない小規模商業者や地方の商業者へ取引対象を限定するということになりつつあるようである。  現在首都にはいくつもの商社が展開しているが、その市場をめぐっては、それぞれ品質やサービスの競争をはじめ、取扱商品の「住み分け」など戦略的に取引を確保している。今日のモンゴルの物資流通構造に大きく影響する動力である商社の展開は、卸売業と小売業の連関も含め今後ともさらなる省察が必要である。

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