人文地理学会大会 研究発表要旨
2008年 人文地理学会大会
セッションID: 311
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第3会場
「ポテンシャル」を用いた地理情報解析の試み
*梅川 通久
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抄録

 地理情報システム(GIS)を用いた解析が、多くの学術・実務分野で用いられている。本研究では主に人文地理学や社会統計学等を念頭に置き、物理学で場を記述するのに用いられる「ポテンシャル」を応用した数量解析について、GISを用いた解析に使用可能な基礎的手法の開発を行った。今回は主に国スケールの領域での人口密度分布を取り上げ、その特性や都市が人口を集中させる傾向の数値化などについて、ポテンシャル分布の計算をベースとした議論を行う。  人口密度分布に関するポテンシャルは、Socioeconomic Data and Application Center (SEDAC)によりインターネット上で公開されている各国の人口密度分布に関するグリッドデータを用いて、Poisson方程式を数値的に解く事により導出した。数値計算は、Incomplete Choleskey Decomposition - Conjugate Gradient (ICCG)法によるコードを作成して用いた。これを日本、ベトナム、中国の各モデルについて計算し、そのポテンシャル分布と導かれる仮想的な力を、等高線とベクトル場として示す。  計算の結果、日本に関するモデルでは、東京から大阪に至る本州太平洋岸地域においてポテンシャルの大きな谷が見られた。より詳細には東京、名古屋、大阪の3都市圏が谷を構成しているが、東京圏によるポテンシャルの谷の大きさが際立っており、人口を引き寄せる力の大きさを物語っている。またこの大きな谷の他、主要都市による小規模なポテンシャルの谷が見られたが、その分布は3都市圏によるものと比べて極めて小さいことがわかった。  ベトナムのモデルでは、ハノイとホーチミンによる二極構造のポテンシャル谷が存在することが特徴的であり、この2地域が人口を集中させる力において抜きん出ていることを示している。また、両都市間には日本のモデルと同様に小規模なポテンシャルの谷が存在しているが、日本と比較してよりはっきりとその存在が確認できる事が特徴である。これは、ベトナムのモデルが大きな二極のポテンシャルの谷を持つという構造的特徴に由来する、日本のモデルとの違いかもしれない。  この様に、ポテンシャルを計算しその分布を分析する事により、各国や各地域の人口密度分布の特色を、定量的に解釈することが可能となる。また、例えば日本における人口の一極集中問題などについて、本研究で行った様な複数のモデルでのポテンシャル分布の比較が、新たな考察の為の糸口の一つとなるかもしれない。  本研究で導入したポテンシャルのその他の量への応用としては、例えば言語や特定の習慣の分布を当該人口の比率に関する分布等として数値化し、数量解析を行うといった使い方も考えられる。また、異なる種類の地図上の分布量に対してポテンシャルという共通の量を導入することにより、相関関係や複合した効果の数量的な分析へとつなげることも期待される。

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