地理学論集
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研究ノート
札幌市都心部における分譲マンション建設地の土地利用変化
都心人口増加期の個別物件データによる空間分析
浅田 孟橋本 雄一
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2013 年 87 巻 2 号 p. 14-25

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抄録

 本研究の目的は,札幌市を事例として,個別のマンションの立地場所に関して,「人口の都心回帰」現象を引き起こした土地利用変化を解明することである。そのために本研究は,まず札幌市における分譲マンションの供給動向を概観し,次に札幌市都心部の個々の分譲マンション建設前の土地利用を分析し,さらに分譲マンション建設に至るまでの土地利用の変化過程を解明する。なお,これら分析に用いた資料は,有限会社住宅流通研究所発行『マンションDataBook 札幌圏編』と,株式会社ゼンリン発行『住宅地図 札幌市中央区』である。分析の結果,1995年以降に札幌市では中央区で多くの分譲マンションが供給され,それらの建設前の土地利用変化をみると,都心部では早期に商業施設が,続いて業務施設が駐車場などになり,その後にマンションが建設される傾向があった。また,周辺部では早期に専用住宅や社宅が,続いて共同住宅が駐車場になってからマンションになるという過程がみられた。以上のように,1990年代前半以前に,専用住宅や社宅などが駐車場などの社会的休閑地に変わって都心部やその周辺の人口が減少したことと,それらの土地に1990年代後半以降マンションが建設されて人口が増加したことを併せて考えると,本研究で扱った社会的休閑地の増加は,「人口の都心回帰」現象の準備段階として捉えられる。このことから,「人口の都心回帰」現象は,郊外化や都心空洞化という 1980年代に顕著であった動きと連続性をもった変化として理解すべきと考えられる。

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© 2013 北海道地理学会
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