比較生理生化学
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総説
神経筋シナプスのメカニズムとその進化:ホヤから魚,そしてヒトへ
西野 敦雄小野 富三人
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2017 年 34 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

我々の体は,筋肉が動かしている。骨格筋には発生段階,部位,生理特性に応じた分化・多様化が見られ,中枢神経系がその収縮を精妙に指令している。神経からの入力が筋肉をいかに収縮に導くかについては,Galvani以来,時に歴史的な発見を生み出しながら,これまで哺乳類や両生類の脚の筋肉が主なモデルとなり,理解がもたらされてきた。そこで明らかになった興奮−収縮連関機構は,単一の運動ニューロンが骨格筋線維に入力し,イオンチャネル型アセチルコリン受容体に受容されたシグナルが筋細胞膜の活動電位を誘起する“全か無か”の過程が基本となる。他方で,両生類や魚類がもついわゆる「遅筋」は,活動電位が発生せずに収縮が起こることが認められていたが,その興奮−収縮連関の仕組みは未知のままであった。近年,脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物の系統に属する動物「ホヤ」のオタマジャクシ幼生における神経筋シナプスの研究をきっかけとして,魚類の速筋と遅筋の興奮−収縮連関機構の意外な相違点が明らかになった。我々の体に備わっている多様な筋肉がもつ興奮と収縮の仕組みには,まだまだ未知の問題が多く残っている。

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© 2017 日本比較生理生化学会
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