比較生理生化学
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総説
ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシの寄主選択過程
山崎 理正
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2022 年 39 巻 1 号 p. 44-52

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抄録

養菌性キクイムシであるカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)は,病原菌を運搬し,ブナ科樹木の集団枯死,ナラ枯れを引き起こす。被害を抑えるためには,その生態を明らかにする必要がある。寄主木としては集中分布する太い木が好まれ,そのような木でカシノナガキクイムシに穿孔される確率が高くなる1つの要因として,寄主として好適な樹種の樹冠密度が重要であることが野外調査で明らかになった。被害木の分布を解析した結果,カシノナガキクイムシは直近の木には移動分散しないことが示唆された。 フライトミルを用いた研究では,カシノナガキクイムシが最大で30 km 近く飛翔すること,飛翔によって正の走光性は低下し,寄主として好適な樹種の葉からの揮発性物質に対する選好性は上昇することが明らかになった。オルファクトメーターを用いた研究では,カシノナガキクイムシが寄主として好適な樹種の葉からの揮発性物質には誘引され,寄主として不適な樹種の葉からの揮発性物質は忌避することが示された。また,寄主として好適な樹種の新鮮な葉からの揮発性物質には誘引されるが,乾燥した葉からの揮発性物質には誘引されないことも明らかになった。材片を用いた研究では,カシノナガキクイムシが樹幹上の溝の開口幅ではなく,角度を認識し,穿孔行動に移ることが示された。これら一連の研究で示唆された,カシノナガキクイムシの寄主選択過程について考察した。

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© 2022 日本比較生理生化学会
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