2026 年 43 巻 2 号 p. 107-116
野外代謝速度は,動物が自然環境下でどの程度のエネルギーを消費しているのかを示す指標である。地球温暖化の進行は,水圏に生息する外温動物,特に魚類のエネルギー収支に影響を与える可能性が高いとされ,魚類が日々の生活に費やしているエネルギー量である野外代謝速度を把握することは,温暖化が魚類に及ぼす影響をメカニズムから理解していく上で重要といえる。本稿では,魚類の野外代謝速度の推定手法として,バイオロギング手法と耳石の安定同位体比分析に着目し,原理や適用例を紹介する。両手法では推定できる時間解像度や不確実性が異なるため,研究目的に応じて適切な手法選択が重要といえる。推定された代謝情報を環境データとも統合していくことで,環境変化に対する魚類の行動生理的応答の実態把握が可能となり,気候変動への応答予測にも資すると期待される。