2026 年 43 巻 2 号 p. 117-125
読者の方々は,幼少期に虫取り網を片手に野山や公園を駆け回って昆虫採集に夢中になった時期があったのではなかろうか?研究者となった今でも,それを生業としていらっしゃる方もおられよう。虫たちを追いかけた末に捕獲できた満足感や,幹や枝に擬態している虫を見つけた時の興奮,初めて見る虫と出会った時の感動など,宝探しにも似た感覚で夢中になられたのではないだろうか。それらの経験を通して,生き物の面白さや不思議さなどを昆虫から教わり,生き物の道に進まれた方も多いのではないかと思う。現在,学校現場では飼育舎(小屋)や教室,理科室に至るまでほとんどの学校で生き物の姿がなく,確実に子供たちの生き物離れが進んでいることを実感する。現代の学校現場でのタブレットや電子黒板などを用いたICT教育の普及は,もちろんメリットもあるが,画像や動画を多用することで実物との距離を離してしまったと感じる。そのような時代の中,私は学校現場で実物を目の前に学習することの大切さを唱え続けている。今では学校教員自身も「虫嫌い」が多く,教科書の記載部分を足早に流すだけの学習で,観察すべきポイントを押さえた昆虫教育となっていないことを痛感する。これでは,折角の楽しい理科への入り口であるにも関わらず,児童たちはその面白さにまで全く踏み込めないままである。ここでは,筆者が小学校への出前授業を通じて感じた児童の昆虫理解の実態と,改良を重ねてきた昆虫教育についてのアウトリーチ活動の実践例を紹介する。